HoSoVoSo『春が過ぎたら』(2017)

 この音楽は、地方都市の「やまぎは」でこそ生まれ得た、フォーク・ミュージックなのだろう。HoSoVoSoの実家の部屋で、すべての楽器を一人で演奏して録音されたという本作は、生音を強調したオーセンティックな音色と、少年のような淡さを残した歌声からなる、衒いなきフォーク・ミュージックである。

 そのような音楽と共に、本作に特徴的に表れるのは、「山にかえる」、「やまぎは」、「白い粉」で描かれる、私たちの先祖と「山」の関係や、私たちの生活と「山」の関係というテーマである。山の近くで育ち、今もその土地に住まう青年だからこそ描けた世界が、音楽とともに眼前に広がる。そこには、柳田國男がかつて『山の人生』にて論じたような、この島国の先祖たる「山人」と、山の近くに住まう人びととの関係性といった、「山」への創造力を見通すこともできよう。

 過去にその土地に住んでいた(とされる)人々と、今その土地に住まい、生きる人々の記憶の結節点に、この音楽はある。ザ・フォーク・クルセダースや、山平和彦、ソウル・フラワー・ユニオンの作品群などとも比較しうる、土地につきまとう土着性や民俗性を内包した、気丈でありながら煌き揺蕩うフォーク・ミュージックが、本作にはつまっているのだ。

HoSoVoSo「ストーク」(『春が過ぎたら』(2016)所収)

" " is a river of music that has absorbed many streams.

会社員。社会と情動とテクストに巻き込まれながら文化(特にポピュラー音楽)を書き、語り、読み、消費するということについて考えています。

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