長谷川ニューコーラスフレンズ『夏はどうだった』(2018)

 東京を拠点に活動する長谷川大を中心とした「音楽サークル」による一作目。メンバーには、吉祥寺ココナッツディスクでも販売され話題をさらった『おんぶしてジャンプ』を発表し、横沢俊一郎バンドでも活躍するジョルジョデコヤツの名もある。

 本作に収められたのは初期かせきさいだぁ≡のような、(「日本」の)夏の情景を形どる郷愁と、胸の高鳴りを感じさせるリリシズム。その抒情性にGirls、BEST COASTからTeen Runningsにまで至るグッド・メロディーを第一義としたローファイ・ガレージの流脈が出会う。

 作品中でのノスタルジーを喚起する仕掛けも特徴的だ。例えば#3「ドーナツ」での「オラはにんきもの」(アニメ クレヨンしんちゃん 93-95年OP )のメロディー・ラインを借りたコーラス・ワークは、例えば夏休みの午前10時ごろから始まるアニメ再放送の記憶を再帰させるし、#5「ピエロ」での〈日常にいつも違和感を!! 普通にならないでいてね!!〉という呼びかけは、あのころの自分から、大人になってしまった僕らへのメッセージのように聞こえる。

 そんな平成一桁生まれの僕が経験してきた「夏」の想い出を喚起しながら、僕の平成最後の夏を出迎え、別れを告げた最高のサマー・アルバム。少しゴミや虫が浮かんだ、塩素臭い学校のプールで、ラジカセから大音量で聴きたい。

長谷川ニューコーラスフレンズ「ドーナツ」(『夏はどうだった』(2018)所収)

" " is a river of music that has absorbed many streams.

会社員。社会と情動とテクストに巻き込まれながら文化(特にポピュラー音楽)を書き、語り、読み、消費するということについて考えています。

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